大判例

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東京高等裁判所 昭和32年(う)1102号 判決

被告人 沼田常夫

〔抄 録〕

(一) 原判決がその認定にかかる判示犯罪事実として引用する起訴状記載の公訴事実第三、及び第四中に、いずれも犯行の年月日として、同年同月二十九日なる記載が存し、右は、前文との連絡上、昭和三十二年二月二十九日を指しているもののようにみられること、並びに昭和三十二年には二月二十九日なる暦日が存在しないことは、いずれも所論指摘のとおりであつて、所論は、この点をとらえて、原判決の理由不備並びに事実誤認を主張するもののようであるが、しかし、原判決が右第三、第四の各事実の証拠として挙示する大森いね作成の被害届司法警察職員作成の大森いね方の実況見分調書、武田利勝作成の被害届及び確認書の各記載に徴するときは、右各犯行の日は、昭和三十二年二月二十八日であることが認め得られるのであつて、前示起訴状中の二十九日とある部分の各記載は、いずれも二十八日の誤記であることが明らかであるから、原判決には、この点につき、所論のような破棄の事由となるべき理由不備の違法または判決に影響を及ぼすことの明らかな事実の誤認があるものということはできない。この点の所論は採用できない。

(二) 原判決が判示犯罪事実として引用する起訴状記載の公訴事実第五中に、青色馬一頭を窃取した旨の記載の存することは所論のとおりであつて、所論は、青色の馬は、経験則上存在しないから、原判決には、この点につき、経験則の違反並びに理由不備の違法がある旨主張するのであるが、しかし、右起訴状の記載を、被害者下村哲雄作成名義の被害届及び確認書、司法警察員巡査部長小泉彌二郎作成名義の昭和三十二年三月五日附領置調書等の各記載と対照して検討するときは、右起訴状においては、青毛と書くべきところを青色と誤記したものであることが明らかであるところ、馬の毛色のうち、青みを帯びた黒色のものを「青毛」または略して「あお」と称することは、わが国古来の慣例であつて、すこしも経験則に違反するものではないから、原判決には、この点につき、所論のような経験則の違反、並びに理由不備の違法があるものということはできない。この点の所論も採用しがたく、論旨はすべてその理由がない。

(中西 山田 石井謹)

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